第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「そうなんだ。で、その論文を今書き直してると?」
「うん。だけど、どうしてもある所まで来ると手も思考も止まっちゃって、さっきの疑問に行き着いちゃうの」
「何で明智光秀が信長に謀反を起こしたのかって?」
「うーーん、それもあるんだけど、一番気になるのはどうして信長はそこまで気が狂った様になったんだろう?ってとこかな」
「君はそのレポートの結論には何て書いたの?」
「えっとそれは…」
その結論を口に出すのはちょっと恥ずかしくて、私は途端に歯切れが悪くなった。
「…その、織田信長は愛した人に裏切られたんじゃないかな?と思って…」
「つまり?」
「愛よ、愛!私の本当のレポートのテーマは、”本能寺の変”じゃなくて、”信長の愛した女”で、信長はその愛した人との間に何かがあって狂気的な行動へと変わり、結果として本能寺の変で命を落としてしまったと、結論づけたの」
(あ、興奮して体が熱い)
「なるほど……、教授がゴシップ誌だと言ったのも分からないではないかな」
はぁ、はぁと、興奮気味に話す私に、佐助君は冷静なジャッジを下した。
「うっ!やっぱりそうなる?」
「けど、そう結論づける証拠みたいなのがあるなら話は別だけどね」
パチパチと、両目を瞬いた佐助君…
(もしかして、ウインクのつもりかな?)
「証拠と言うか、まだ公にはされてないんだけど、実はこの間の安土城の発掘調査で一通の文が見つかって調べた所、どうやら信長が当時の恋人空良に送った恋文だって判明したの」
「へぇ、名前まで?」
「そう、ちゃんと空良へ、から始まって、織田信長、の名前で締められてるの。信長に妻も子もいないのは、彼の行いが狂気じみているからだとされてきたけど、この文からは信長が空良と言う女性をどれほど愛していたのかがよく分かるの。だから、この女性に裏切られておかしくなったって事はないかなぁって思って…」