第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「信長の恋文かぁ、そんな事まで調べ上げてるなんて、さすが來良さん」
「そりゃそうだよ!佐助君にとって歴史学は趣味の一環だと思うけど、私にとっては生涯の仕事にしたいほど好きな事なんだもん!学芸員の資格を取って博物館で働いて、歴史を”愛”と言うテーマで彩りたいの」
どんな時代でも、男女の恋はいつだって変わらず存在する。どれほど文明が発達しようと、これだけは変わることの無いものだ。
「まぁ確かに俺の専門はタイムスリップ理論の研究だからね」
「未来の発明をしようって人が歴史好きってのも凄いけどね」
「まぁね、俺はちょっと凄い理系男子だから」
「ふふっ、そこ自分で言う?」
佐助くんとは、大学のこの歴史学の講義で偶然隣になり、お互い戦国時代好きだと分かり途端に仲良くなった。
ただ、佐助くんの専攻は宇宙物理学で、歴史学の講義はあくまで趣味の自由科目として受けているらしい(理系なんて日々レポートで忙しいはずなのに何て余裕な発言!)
「あ〜でも、この文以外に何か信長が彼女を愛してたって事が分かるものとか、彼女の存在が分かるものが残されていれば、もうちょっと深いレポートになるのになぁ〜。安土城も本能寺も燃えてしまってるし、500年も前の事を知りたいってのが無理な話なのかなぁ」
史実を超えた真実を知りたいのに…
「そんなに知りたい?」
「うん、知りたい」
「どんな事をしても?」
「?犯罪以外なら…」
形勢逆転!?今度は佐助君がグイグイと身を乗り出して来た。
「実は一週間後、ある事を検証しようと思ってるんだけど…」
「えっ、なになに?」
……私達はすでに講義が始まっていた事に気が付かず教授に叱られるまで、佐助君の研究テーマの一つであるワームホールの出現について熱く話し合った。