第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「どうだろうね。史実では、光秀は信長の狂気の沙汰に耐え切れずに本能寺の変を起こしたってなってるけど」
佐助君はまだ画面と対峙し、器用にキー操作をしながら私の疑問に答えていく。
「じゃあさ、信長は何で途中からあんな狂気じみた行動をする様になっちゃったのかなぁ?」
「うーん、途中からなのか生まれつきなのか、文献を見る限りではいくつかの狂気的行動があるのは確かだね」
「本当に狂ってたのかなぁ。史実は歴史上の事実とされていても、決して真実とは言えないのに…」
「やけに食い下がるね。何かあった?」
ずっとPCの画面にレポートの内容を打ち込みながら私と話していた佐助くんは、ようやく打つ手を止めて顔を上げくすりと笑った(ように見えた)。
「うぅ……聞いてくれる?」
佐助くんのこの反応を待っていましたとばかりに、私は佐助君にグッと顔を寄せて視線を近づけた。
「ここまで俺の興味を誘ったんだ。聞く以外選択肢はなさそうだ」
彼いわく、不随意筋で余り表情筋が柔軟ではない佐助くんの頬が、やや緩んだ様な気がした。
「……あのね、この間”本能寺の変”についてのレポートを書いて教授に提出したんだけど、それを読んでなんて言われたと思う?」
「さぁ?なんて言われたの?」
私は教授の仕草や声を真似ながら説明を始めた。
「“君のレポートはまるで、三流オカルト雑誌の様だね。徳川の埋蔵金とか、武田信玄の諏訪湖の墓とか、その類の雑誌ばかり読みすぎじゃないかね?”よ!ひどくないっ!」
「それは酷いね。その類の雑誌だって、何の根拠もなく掲載しているわけじゃない。徳川の埋蔵金は俺はあると信じてるけど…」
「でしょう?そりゃあちょっと、自分の理想ばかりを押し付けたレポートだったとは思うけどあんな言い方、なんか悔しくって!だから書き直しますって言って研究所から出てきたのっ!」