第9章 貴方と温まる夜〜大晦日特別編〜
〜そして夜〜
「ふふっ、それにしてもあの門松、立派だったよね。あれを信長様が一人で切り倒して持って帰って来たって本当かなぁ」
色々と噂される信長様の都市伝説的な所はいつも本当に謎だ。
「さぁ、けどあの人ならやりかねないけどね」
あの後、お互いの仕事に戻り年内の仕事納めをした私達は、家康の御殿に一緒に帰って来た。
家康の部屋で夕餉を食べるのももう数え切れないほどだけど、まだ信長様の許可を貰っていない私達は、城と御殿で日々別々に暮らしている。
だから、こんな風に過ごせる夜は特別で、何だか胸がくすぐったい。
「あっ!家康見てみてっ!雪が降って来たよっ!」
寒さを覚え、少し襖を開けて外を見れば雪が降り出していた。
「雪って.....、別に珍しいモノじゃないしょ?」
嬉しくて落ち着かない私に対し、家康は涼しげな顔で答える。
「えーそうなの?ここは、結構雪が降るの?」
安土に来て初めての冬だから、私には未知数だ。
「さぁ、どうだろう?俺もここで冬を越すのは今年が初めてだから」
「あっ、じゃあ家康の故郷は?雪が降るの?」
「俺のいた三河も、駿府城の辺りもそんなに雪は降らない地域だよ。あんたの故郷はどうなの?」
「私の故郷は......」
それは、将来家康が幕府を開いて住む場所......
でも、私が本能寺で信長様を助けた事によって歴史は変わっているはず。だから、そんな事は言えない。
「私の住んでた所は、時々雪が降るんだけど、そんなには積もらない所だから、やっぱり雪は珍しいかな」
「だからって、そんなに襖を開けて見てると風邪ひくよ?」
家康は立ち上がり、私を優しく包む様に抱きしめる。
「ふふっ、家康あったかい」
「あんたが冷え過ぎなの!この間みたく熱出して俺のこと忘れられたら困るんだけど?」
「う、うん、そうだね」
襖を締めると、柔らかな唇の感触。
「ほら、やっぱり冷たくなってる」
「.....................っ、」
恋仲になって、初めての大晦日は何だか特別で甘い。
「安土のこの情勢が落ち着いたら、信長様にサラを駿府に連れて行く許しを貰いに行く」
「えっ?」
それって..........