第9章 貴方と温まる夜〜大晦日特別編〜
「来年の除夜の鐘は、駿府城で一緒に聞きたいんだけど.......」
「私......と?」
「他に誰がいるのさ」
少しムッとした顔をして、家康は私を抱きしめる。
「サラ以外はいらない。俺と、一緒に来てくれる?」
「っ............」
突然の事に嬉し過ぎて頭が追いつかず、言葉を言うよりも先に涙が溢れた。
「はぁー、すぐ泣く」
呆れながらも家康は私の涙を拭ってくれる。
「だってー、ううっ」
「サラの返事は?」
「そんなの、オッケーに決まってるよ。ううっ......」
「おっけ?......何?分かんないんだけど......」
慌てるとまだ現代の言葉が先に出てしまう私は、慌てて違う言葉を探す。
「えっと、宜しくお願いしますって言う意味。すごく、うれしいの」
家康がそんな先の事まで考えてくれてたなんて思わなかったから、正直に嬉しい。
「言っとくけど、俺と二人なんてそんなに楽しくないからね」
「そんな事ないっ、絶対楽しいよ!」
「政宗さん達もいないし、この安土より田舎だからつまらないよ?」
「家康となら、無人島だってきっと楽しいから平気」
「っ、あんたね.........」
「だってほんとだもん。家康がいるから私はここで辛い事があっても生きてこられたの。だからこの先も、家康がいるなら平気だよ」
500年先の未来から来て心細かった私を、いつも温めてくれた家康がいるならどこだって怖くない。
「っ、.....俺のセリフ、全部取らないでくれる?その言葉、俺がサラに言いたかったのに」
拗ねた顔はとても愛おしくて、私は自分からキスをした。
「家康が好きだよ。来年も、再来年も、ずっと一緒にいたい」
「だから、それも俺のセリフだったんだけど.....」
拗ねた顔は困った顔に変わり、そして僅かに微笑むと、私の耳元で囁いた。
「サラ、大好きだよ」
「っ..........」
優しく抱きしめられると唇が重なり、そのままゆっくりと身体を倒された。
静かに降り注ぐ雪の音と除夜の鐘を聞きながら、来年の除夜の鐘は駿府かもしれないと言う思いを胸に、私達はお互いの思いと熱を分かち合った。