第8章 Happily ever after ⑥トラウマ〜家康〜
今夜は、信長様の傘下の国の大名が安土城を訪れており、歓迎の宴が安土城で開かれていた。
信長様には現在、御正室も側室も、恋仲の女性もいないため、こう言う時は、織田家ゆかりの姫として、サラが信長様の横に座らせられる事が少なくない。
信長様の命令は絶対だし、サラは織田軍の世話役も兼ねているから、それはそれで割り切っている。
だが俺の発作は、大体こんな時に起こる。
ほとんどの場合は、憎しみや憎悪だが、サラに対しては、強い嫉妬が独占欲となって襲いかかる。
能天気で無自覚、そして無防備のサラは、どんな時も皆からの酌を受け、愛想よくニコニコしている。それが結構近隣諸国の評判となり、今では
サラ見たさに訪れる大名も少なくない。
今夜もそんな面白くないことを繰り広げられ、俺はまた、自分がどす黒い感情に支配されそうになるのを感じ、宴会を抜けようと、広間を出た。
サラが家康が広間にいないと気づいたのは、その少し後。
慌てて外に出たが、家康は御殿に帰った後だと聞いた。
(何も言わずに帰るなんて)
何かあったのだと思い、家康の御殿に行こうとすると、
「サラ、こんな時間から城外に出るのは危険だ。俺も帰る所だから送ってやる。」
秀吉さんが心配して私を家康の御殿まで送ってくれた。