第7章 Happily ever after ⑤安土城の珍客〜家康〜
「信長様!」
手には赤ちゃんを抱えている。
「俺の子かどうか確かめておったが、どうやら違ったらしいな」
ニヤリと笑いながら赤ちゃんを女性に渡す。
「坊や............坊や」
泣きながら赤ちゃんを受け取り、強く抱きしめる女性。
「我らの子と嘘をつき、自らの子を捨てたのは許し難いが、今回は織田軍にも一因はある。女よ、二度とその赤子、離すでないぞ」
「はいっ、本当に申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございます」
女性は何度も頭を下げた。
「サラ、貴様に針子部屋の世話役を命ずる。手に職を持たぬ女達をよく指導してやるが良い」
「はい、信長様。ありがとうございます」
信長様は、そう言ってその場を去って行った。
その後、三成くんと秀吉さんの協力もあり、針子部屋を拡大し、同時に、現代で言う託児所のような施設も作ってもらい、未亡人や子育て中で働くにも働けない女性達の受け入れを万全な形にした。
この事が噂に噂を呼び、安土にはまた人が集まり、優れた針子と素晴らしい縫い物の町となって行くのはもう少し先の話。