第7章 Happily ever after ⑤安土城の珍客〜家康〜
赤ちゃんの件もようやく落ち着き、私と家康は久しぶりに夜を一緒に過ごしていた。
「ついには安土城の内部を動かすなんて、あんたの能天気もここまで来ると大したもんだね」
私をその腕に抱き、家康が呟く。
「いつも、心配かけてごめんなさい。でも、赤ちゃんがお母さんの元に戻れて本当に良かった」
全員を救えるわけじゃないけど、悲しむ人は少ない方がいい。
「サラが赤子を抱っこしてるのを見て、母親ってこんな感じだったのかなって思った。俺は母の記憶が無いから」
「家康........」
「正直、今まで子供なんて面倒くさいし煩いし、要らないって思ってたけど、サラのあんな顔を見られるなら、いいかもって思った」
私は、私を抱きしめる家康の腕をぎゅっと抱きしめ返した。
「家康によく似た、天邪鬼じゃない男の子がいいな」
私が言うと。
「俺は、サラによく似た危なっかしくない女の子がいい」
意地悪な笑みを浮かべながら家康が言い返す。
2人で見つめ会い、声を出して笑いあう。
「でも、今はまだ、家康と2人の時間を楽しみたい」
「俺も、サラ、愛してる」
自然と唇が重なり、甘い時間が始まる。
まだ、親になるって事がどんな事なのか、今の私たちには分からないけど、そんな日が来た時のことをそれぞれに思い描きながら、私たちはその夜、互いの体を重ねた。
そう言えば、今回の騒動の発端となった政宗は、その後1ヶ月間、秀吉さんから山のような書類整理を任され、城から一歩も出られなくされたらしい。