第1章 あなたと両思い 〜徳川家康〜
秀吉と城下町を歩きながら、
サラはまださっきの家康との事が頭から離れずにいた。
「どうしたサラ、元気ないけど緊張してんのか?」
秀吉が心配そうに顔を覗き込む。
「ううん。そんな事ないよ。
ただ、女の人達の視線が痛いかなぁ」
秀吉さんに好意を寄せる女性達が、
私たちを遠巻きに見て何やら話し込んでいる。
「まだまだこんなんじゃ納得してもらえないなぁ。
手も繋いで見せびらかしとくか」
そう言うと、秀吉は大きな掌でサラの手を繋ぎ始めた。
「あっ....」
いくら恋仲のふりとは言え、
秀吉のさりげない行動はやはりドキドキとして、
サラの顔は赤くなった。
そんな2人の姿はどこから見ても恋仲に成りたてのように見えた。
それを恨めしそうに見る1人の女の姿があったことに、
その時の2人は気づかなかった。
やがて反物屋にやってきたサラは
ある反物に目がとまる。
(これ、家康に似合いそう。)
家康の髪色をした綺麗な反物を手に取り
サラは今朝の事をまた思い出す。
感情をあまり表に出さない家康が見せた激しい一面に、
サラの心は戸惑っていた。
(何で私に口づけたの?)
自分に問いかけても答えは分からない。
「これを下さい。」
家康の髪色の反物を購入した。
(この着物を仕立てたら、これを持って家康に告白しよう。
フラれても平気。家康に私の気持ちを知ってもらいたい。)
サラは告白する覚悟を決めた。