第6章 Happily ever after ④夜の思いつき〜家康〜
(どうぞって言われても、何すればいいの。)
緊張し過ぎて手が震える。
いつも家康が与えてくれる幸せな事を思い出しながら、家康の胸板に両手をつき、身を屈めて家康に口づける。恥ずかしさからすぐに離そうとすると、
「まだだめ。もっと」
「んっ、」
頭の後ろをガッチリとつかまれ、唇へと戻された。
唇を一周するように舌先で舐められ、やんわりと食まれる。
「ん、はぁ......」
無意識に体は息を欲するけれど、それを許さないように歯列の奥へと舌が入り込み呼吸を奪う。
身体を下にして受け止める口づけと違い、上から受ける口づけは、いつも以上に自分の呼吸を乱し、思考を奪って行く。
「は、ふぁ........んん」
自分を支える手の力が抜けて行き、ついには覆いかぶさるように、家康の胸に崩れ落ちる。
「もう、終わり?」
言葉の割に優しく私の髪を撫でながら、家康が私の顔を覗き込む。
「そんなに簡単にへたらないで。」
優しく耳元で囁き、ペロッと耳を舐める。
「ひゃっ.....っ.........うん」
(この後、どうすればいいの。)
家康に愛されている時は、いつも私が先に何も考えられなくなってしまう(意識ももちろん手放してしまう)から、家康をどうやって喜ばすことができるのか、今更ながら分からない。
緊張はマックスで、頭も混乱するけど、家康に喜んでほしい。震える指先で、家康の着物の帯に手をかける。下から家康の視線を感じるけど、恥ずかしくて見ることができない。
やっとの事で帯を解くと、恥ずかしさを隠すように、家康の胸板にチュッと口づける。
「っ.....」
家康から声が漏れる。
もう一度、同じ所に口づけ、肩、首すじ、耳と、まるで家康の上を這う様に、不器用な愛撫を落とす。
頬に口づけると、家康と目が合った。
(そんなに真っ直ぐ見つめられたら、息が出来ないよ)
慌てて目をそらすと、
「今のサラを色で例えるなら、真紅だね」
からかい交じりに笑われた。