第5章 Happily ever after ③何度でも〜家康〜
「家康さんサラです。入ってもいいですか?」
襖越しに声をかけると、
「ちょっと待ってて。」
家康の声が聞こえてきて、襖が開いた。
「どうしたの?」
襖の前で立ちサラを見据える家康。
「あのお話がしたくて、入ってもいいですか?」
家康は少し考えるように目線をそらしため息をつくと、
「こんな夜に男の部屋に来るって事の意味分かってる?」
「っえ?私はただ、お話を.....わっ。」
突然に、でも優しくサラを抱きしめた。
「こんな事されても文句言えないけど、それでも入る勇気ある?」
家康は、わざと試すように耳元で囁いた。
サラはしばらく動きを止めたが、やがて覚悟を決めたようにコクリと小さく頷いた。
「........っ、あんたね」
サラを部屋に戻らせる為に、わざと抱きしめた腕の置き場所に困った家康は、慌てて手を離しサラを軽く突き離した。
「悪いけど帰って。」
「えっ?」
戸惑うサラに家康は、
「俺、何するか分からないよ。」
眉を寄せ、苦しげに呟いた。
「構いません。」
「はぁ?バカなのあんた。」
「バカじゃ、ありません。だって私、家康さんのこと、好きだったんですよね。」
(話を聞いて欲しい。だから、真実を伝えないとダメだよね。)
「あと、これは、間違ってたらごめんなさい。家康さんももしかしたら、好きでいてくれたのかなっ.........て。」
「......っ」
家康は驚いた顔でサラをみつめ、観念したように口を開いた。
「好きだったんじゃない。」
「えっ?」
家康は手を伸ばし、サラを抱き寄せた。
「あっ、」
「好きなんだよ。あんたも俺も、今も、これからもずっと。
あんなに俺の事追いかけ回しといて、薬の副作用ぐらいで忘れるとかどうなってんの、ほんと!」
我慢していた思いが家康の口から溢れ出た。
サラはそんな家康の手を取り、
「家康さん、教えて下さい。私たちの事。」
真っ赤になりながらも、微笑みながらお願いした。
その後、家康の部屋で2人の思い出話を聞いていたサラは、幸せな空気とまどろみに包まれ、自然に引き寄せられるように、家康の膝の上へと眠りに落ちた。