第5章 Happily ever after ③何度でも〜家康〜
夜になり、自室に戻ってからも、サラの心は落ち着かなかった。
安土城で目覚めてから今まで、記憶を無くしているとはいえ、家康のみに感じる甘く切ない気持ちは何なのか。
見つめられれば、息をすることを忘れそうになるくらいに苦しく
触れられれば心臓が早鐘のように打ち
囁かれれば全身を甘い痺れが襲う
極め付けはあの笑顔。
もっともっと、笑って欲しいと自分の中の何かか囁いているみたいだ。
「好き......だったのかな。」
何度考えても、全部の感情をたすと、ここに行き着いてしまう。
そして、サラを優しく見つめる家康の眼差しを思い出す。
「もしかして、家康さんも私の事を?」
(いやいやいや、自惚れすぎでしょ!)
頭をブンブン振って湧き上がった思いを消す。
でも、じゃあどうして私はここに住んでいたことがあって、記憶が無い私にこんなに優しくしてくれるんだろう。
弓の稽古場で触れられた時、耳元で囁やかれた時、自分の体なのに、別にもう一人の自分がいるみたいに、家康さんを欲して体が疼いた。
「このままじゃ、ダメだよね。」
ぐずぐず悩むのは性に合わない。
サラは思い切って家康の部屋へと向かった。