第5章 Happily ever after ③何度でも〜家康〜
「おいおい。サラが記憶喪失だって?」
一番に部屋に飛び込んできたのは政宗さん。
「サラがおかしいってどう言う事だ?」
次は秀吉さん。
「小さなささやかな頭が熱に耐えられなかったって?」
これは光秀さん。
「サラ様が、」
三成が何かを言いかけたが、
「いい、お前は何も言うな!」
話がややこしくなるから言葉を遮った。
言い方は其々違えど、皆顔は心配そうだ。
「あんたたち、騒がず静かにして下さい。サラが益々不安がります。」
俺の言葉で皆サラに視線を落とす。
サラはまるで知らないところに連れ去られてきたかのような怯えた顔で、俺たちを見て言った。
「あなた方は誰ですか?」
「まるで、サラが安土に来た頃みたいだな。」
秀吉さんが言う。
「あの時の方がマシですよ。今のサラは500年後の世界から来た事すら分かっていません。」
家康が呟く。
「おいサラ、お前自分が誰なのかも分かんねーのか?」
政宗さんが尋ねると、
「私は、サラです。念願のデザイナーへの就職も決まって、それで、京都にある本能寺跡地に旅行に行って、それから......」
サラが頭を抱えて言葉を止める。
「そこで、.........」
「無理に思い出さなくていい。」
サラをこれ以上苦しめたくなくて、庇うようにサラを抱きしめる。
「何をするんですか!離して下さい。」
「.........」
嫌悪感を露わに体を捻り俺から離れるサラ。
こんな風に拒絶されたのは初めてだ。
「おいおい。家康の事も思い出さねーのか?」
政宗さんが言う。
「いいんです。黙ってて下さい。多分、薬の副作用なんで。暫く様子を見ます。」
俺は相当なダメージを受けてはいたが、
皆を諭し、信長様に状況を説明して、サラを自分の御殿でしばらく預かることにした。
サラと俺が恋仲である事は敢えて伏せてもらった。