第5章 Happily ever after ③何度でも〜家康〜
「くそっ」
ゴリゴリと、薬研で薬を煎じながら、まだ意識を取り戻さないサラを横目で見る。
倒れた日、女中達から聞く話によると、朝からくしゃみや咳を繰り返し、春だというのに寒そうにしていたこと。
サラが作ってくれていた煮物を食べてみると、家康にさえ辛いと感じるほど辛く味付けがされていたこと。
味の感覚が無くなるほど体調が辛かったのかと思うと、家康の胸は締めつけられた。
もう三日も目を覚まさない。
薬も様々な処方を試すが効かない。
「これ以上長引くと危険だ。」
残された処方はもうこれしかない。
煎じた薬草はまだ確認されていない副作用が心配されたが、確実に熱を下げてくれる作用があった。
「サラ、薬を飲ますよ。」
家康は自分の口に薬を含むと、サラの頭を優しく持ち上げその口に含ませた。コクンと喉が動き飲んだことを確認した。
「頼む、良くなってくれ。」
祈るようにサラの手を握り、家康はそのままサラの横で眠りについた。
翌朝、家康が目を覚ましサラの熱を計ると、漸く熱は下がり、落ち着いた寝息が聞こえた。
「良かった。何とか峠は越したな。」
安心してサラの髪を撫でると、
「ん.....」
サラが目を覚ました。
「サラっ!」
家康の声に気づき、
ゆっくりとサラが家康を見る。
「............」
「サラ?」
何とも言えない違和感を感じながらも、家康はに触れようと手を伸ばした。すると、サラはビクッと体を震わせ、
「だ.....れですか?」
「はっ?」