第3章 Happily ever after①君の欲しい物〜家康〜
サラが目覚めた時、サラは家康の部屋の中だった。
「目が覚めた?」
襖を開け、家康が入ってくる。
「家康。」
「手、出して」
「えっ?」
「いいから、早く。」
「............うん。」
おずおずと手を差し出すと、
スリスリと、手首に軟膏を塗り出した。
よく見ると、力強く握られた時の跡がくっきりと残っている。
「アザが残るといけないから。あんた女の子だし。」
軟膏を塗る家康の手つきは優しく、サラの目からは涙が溢れ出した。
「言っとくけど、俺は謝らないよ。あんたが、俺以外の男と二人っきりになったり、何かをもらうなんて許せないし、許さない。」
「ごめん、なさい」
「っ、あんたは無欲なんだって思ってた。何を聞いても、何も欲しがらなかったから、なのに何で。」
怒りがまた込み上がってくる。
「これは、家康なの。」
首から鎖の装飾品を外し、サラが俺の手に置いた。
「はっ?」
「これは、エメラルドと言って私の誕生石。偶然だけど、家康の瞳の色に似てるでしょ?」
鎖の先端には。確かに俺の眼に似た色の石。
「家康が、戦や調査でいない間、少しでも家康を感じられるように。無事に戻ってきてくれるように、お守りとしてどうしても欲しかったの。この石は、この国では採取出来ない石だから、信長様にお願いをして、見かけたら教えて欲しいと。」
「それに、貰ったわけじゃないよ。信長様は要らないと言ったけど、針子の仕事で稼いだお金を払って。高価なものだから、その、お金は足りなかったとは思うけど。でもこれを身につけていれば、家康といつでも一緒にいられるような気がして。」
怒りが......消えていく。
「それでも、もう俺以外の男と二人きりにはならないで。貰い物も禁止。」
首飾りをサラの首に付け直し、優しく抱きしめる。
「うん。ごめんなさい。」
サラも俺を抱きしめ返す。
「あのね、私は、無欲じゃないよ。むしろ、家康と恋仲になってから、欲しい物がどんどん増えていってる。」
「どーだか。」
「ほんとだよ。たくさんあるんだから。」
「じゃあ、なにが欲しいの?全部言ってみなよ。」
そう言ってサラの顔を覗き込む。