第11章 いいこと探し 〜直江兼続〜
「俺は、お前のように楽天的には考えられない。今でもまだお前を抱く事をうまく制御できていないのに、こんな状況でお前を抱けばメチャクチャにして腹の子に害を成すかもしれない」
「そんなことはありません、兼続さんは、誰よりも素敵な親になれます」
(誰よりも、自分に厳しいあなたがなれないはずがない)
「気休めを言うな、お前も見たはずだ、俺の抑えきれない残虐な部分を…」
「っ、でもあれは… 」
「正当化はするな、」
「分かってます。でも、私はそんな兼続さんを受け止めるって決めたんです。あなたが大切だから、あなたの枷になるって…」
あんな風に苦しまなくて済むように、私があなたの内に潜む辛い過去や苦しみに枷をかける。
「俺を受け止め続ければ、腹の子は死ぬかもしれんぞ?」
「死なせません。それに、兼続さんは絶対にそんなことはしません」
「お前は俺を買い被り過ぎだ。俺は今だって、お前の事をめちゃくちゃにしてしまいたいほどに抱きたくて仕方がない。腹の子に気など使えないほどに…」
「……っ」
触れたいと思っていたのが自分だけではないのだと分かり、こんな話の途中だけど思わず顔がニヤけた。
「…馬鹿、ニヤつくな」
「っ、だって…」
兼続さんのありのままの気持ちは、やはり思いやりと情熱で溢れていて…
「兼続さんはやっぱり優しいです」
唇を噛み締めて私を見据える兼続さんの手を取って、私のお腹に当てた。
「!何をする?」
戸惑い手を離そうとする兼続さんの手をぎゅっと掴んでもう一度私のお腹に当てた。
「たくさん触って撫でてください。あなたの子がこの中にもう生きてるんです」
「っ、」
「不思議ですよね。この中で十月十日の間育ってやがて産まれてくる。あなたと、私の子として…」
「……っ、俺のような者が父などと、後悔するだけだ」
お腹に当てた手をじっと苦しそうに見つめながら言葉を紡ぎ出す兼続さんが愛おしい。
子供ができて、嫌なわけじゃなかった。彼はただ、私たちを傷つけてしまう事を恐れていただけ。
「兼続さんは人の心を勝手に決めすぎです」
本当に、勝手に私たちの思いを決めないでほしい。
「どう言う意味だ?」
訝しげに私を見る綺麗な顔に近づき口づけた。