第11章 いいこと探し 〜直江兼続〜
「心配して頂きありがとうございます。でも、大丈夫です。体調は別に悪くありません」
(悪阻は…病気じゃあないし…)
「それならば、先ほどの独り言の詳細を教えろ」
綺麗な顔が凄味を効かせて私を見つめる。
「独り言って…さっきのあれは……」
(どうしよう…なんで誤魔化そう)
「あっ!あれですよ、新しい着物の仕立をどうしようか迷ってて…」
もう自分でも誤魔化せていない事は、目の前の恋人の鋭い視線で分かる。
蛇に睨まれたカエルとはきっと、こんな気分なんだろう…
「あーどうしてちゃんとしなかったんだろう…、辺りから全て聞かせてもらった。下手な言い訳はするな」
「っ……!」
(って、ほとんど聞かれてるしっ!)
「何があった、話せ」
抱き締めた腕を少し緩めて、兼続さんは私を厳しく見据えた。
「あの…なんでも……ん!」
長い指が私の唇を塞いだ。
「嘘をつくな。何かあったとお前の顔には書いてある」
「……っ、」
兼続さんに黙ってる事なんてやっぱりできない。話すしかないと覚悟を決めて、私は兼続さんを見つめた。
「あの、何を聞いても驚かないで下さいね?」
「お前の言うことは、ほとんどが理解できないが今更驚きはしない」
「そ、そうですか?それなら…」
「早く言え」
「………あの……あれが遅れてて…」
「?……何が遅れてる?」
(うーー、頭脳明晰な軍師なんだから読み取ってほしいのに…)
「その…月のものが遅れてるみたいなんです」
「回りくどいな、はっきり言え」
(くぅ〜、だからハッキリ言ったら爆弾発言になっちゃうからオブラートに包んでるのに…!)
綺麗すぎるって、こう言う時クールに更に磨きがかかって鋭いツララのように言葉も態度も刺さってくるのは気のせいだろうか…?
「っ、…だから、月のものが三月ほど遅れていて、その…子どもができたんじゃないかって…」
ついに言ってしまった事に、顔だけじゃなく身体中が熱くなった。
(今…どんな顔してるの…?)
兼続さんの反応が何よりも気になる私は、縋るような気持ちで彼の目を見たけど…