第11章 いいこと探し 〜直江兼続〜
「あー、ダメだ、いい考えが浮かばない」
いいこと探しをしようなんて言っておきながら、ものすごい爆弾を投げつけようとしてるなんてどうすればいい?
「何をさっきから迷ってる?」
頭を抱えて考え込んでいたら、後ろから懐かしい声が…
「かっ、兼続さんっ!」
(もう戻ったの!?)
「何をそんなに驚いてる?俺が戻る事を聞いてなかったのか?」
久しぶりに見る精悍な顔は、呆れた眼差しを私に向けている。
「あ、さっき聞いたばかりで…こんなに早いとは思わなくて………っ、」
(ダメだ、抱きつきたい)
悩みは一旦置いておこう。だって、久しぶりに兼続さんに会えて嬉しい。
「お帰りなさいっ!」
伸ばした手よりも先に、兼続さんの手が伸びて私を抱きしめた。
「ただいま」
優しい言葉と一緒に、藤の香りが鼻先をくすぐり兼続さんの存在を確かなものへと変えてくれる。
「ちゃんと食べてたのか?少し痩せたみたいだが…」
兼続さんの指摘にドキッとするけど…
「…っ、兼続さんがキツく抱きしめすぎなんです。そんなに抱き締められたら誰だって痩せたように感じます」
(我ながら上手い切り返しだ…)
心の中で自分を褒めていると、
「それで誤魔化せたつもりか?」
「えっ?…わっ、兼続さんっ…!」
兼続さんは私を抱き上げてその場に腰を下ろした。
久しぶりに座る兼続さんの膝の上はドキドキして落ち着かない。
「あの……んっ!」
端正な顔を見る間も無く唇を奪われた。
(あぁ、兼続さんのキスだ)
激しい気性を内に秘めた兼続さんのキスは噛みつかれるような、食べられてしまうんじゃ無いかと錯覚してしまうほどに激しくて情熱的なもので、三か月ぶりと言うこともあって、私の体の力はあっという間に奪われてしまう。
「やはり軽い。力が抜けてこれほど軽いとは、どこか体調を悪くしているのか?」
まるで体重計の様な役割も担ってくれる私の恋人は、目を細めて伺う様に私を見た。