第11章 いいこと探し 〜直江兼続〜
生理が来ていない事に気がついたのはひと月ほど前…
毎月規則正しく来ていた生理が、兼続さんと恋仲になってから今日まで来なかった。それはつまり、もう三ヶ月生理が来ていないと言う事で…
心を通わせ合って恋仲となったけど、まだ体を重ねたのはわずかな時しかないのに…
「どうしよう…妊娠したかもなんて言えない」
この時代の人たちの男女の付き合いがどの程度なのかも分からない。
付き合うって事は結婚するって事?それとも、私のいた時代みたいに、付き合うから結婚ってわけじゃない?
「あーーっ、どうしてちゃんとしなかったんだろう…現代にいた時の私からは考えられない」
でも、それ程にこの恋に私は夢中で余裕がないって事だ。
妊娠したかもと思い当たるのは、あの夜の日…
戦が終わり、無事を確かめ合ったあの日、あの夜……
互いの気持ちが昂り過ぎていたあの日、兼続さんは自分の気持ちに縛られることなく思うままに私を抱きたいと言った。
私を愛することを躊躇っていた兼続さんの素直な気持ちを伝えられ、そんな彼を心から愛おしいと思った私は、彼をそのまま受け止め、彼もまた彼の思いを真っ直ぐ私にぶつけてくれた。
激しくも優しい愛が詰まった夜で、今まで感じたことの無い幸せに満たされた。
だから、
「後悔はしてない。うん、してない」
あの夜は、彼の全てを受け止めたかったし感じたかった。
自分の事を心から嫌悪する彼が見せてくれたありのままの彼を受け止めて…本当に幸せだった…
「このまま隠し通すなんて…できないよね…?」
春日山の光秀さんか?って思うほどに心の内を全て読まれてしまうし…隠し通せる自信もない。
「案外…喜んでくれるかも…?」
ダメだ、キングオブクールのような彼がドラマのように抱きしめて喜んでくれるイメージが全然浮かばない。
「一体、どんな反応をするかな……?」
きっといつもの涼しい顔で、”そうか”って言うかな?
それとも……困った顔をする……?
「ううん、兼続さんは私を傷つける事はしない。
きっと喜んでくれる」
……でも、それがもし我慢だったら…?
耐える事、自分の心を縛り付ける事を自身にずっと課して来たあの人を困らせる事にならないだろうか?