第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
正直、あり得ないと頭では分かっていたのに、空良が俺の元へと戻って来たのだと、心が錯覚した。
居ても立ってもいられず來良を抱きしめると、抱き心地も甘い香りも空良そのもので、俺は更に混乱した。
あの時、來良に阻まれ成敗し損ねた刺客が俺に襲いかかっていなければ、口づけていたやもしれぬ程に、心が乱された。
愚かな刺客だ、來良の命乞いで助けてやったのに、奴は結局俺に斬られ、それを見た來良は恐怖で顔を引き攣らせながら意識を失った。
部屋へ來良を連れ帰り褥へ寝かせた。
改めて見ると、異国の服なのか?変わった格好をしており、肌は空良と比べると健康的に良く焼けていた。
「本当に、空良ではないのか?」
髪を一房手に取れば、それは確かに空良の柔らかな髪の感触。
「空良を語る刺客か?」
だが刺客であるなら、自分は空良ではないなどと口にするとは思えん。しかも、人が斬られる様を見ただけで気をやるとも…
「悪いが調べさせてもらうぞ」
女中に用意させた着物に着替えさせるついでに、俺は來良の身体を隈なく調べる事にした。
訳の分からぬ着物を脱がせると、顔や腕とは違い透き通る様な肌の白さに目を奪われた。
空良を初めて抱いた夜が脳裏を駆け巡る。
「胸は…空良より若干控え目か?」
奴の柔らかで甘い肌を身体が自然と思い出し、あろう事か己が僅かな反応を見せた。
「何の痕もなく綺麗だ。…男はおらぬと見える」
「…ん、」
滑らかな肌に手を滑らせれば、目の前の女は悩ましい声を漏らした。
「………っ、そんな声まで奴に似ておるのか…」
双子でも、成長すればここまで瓜二つと言うわけにはいかぬであろうが、まるで本当に空良が生き返ったような目の前の女に、空良以外に反応しないはずの体が疼く。
「これ以上はまずいな」
もうどこをどう見ても空良にしか見えない女の身体は目に毒だ。
奴の身体を浮かせて着物を素早く着せていくが、奴の素肌に触れるたびに、空良に触れていた時と同じ様な感覚がビリビリと体に伝わり益々俺を混乱させた。