第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
〜〜次の日〜〜
「……なんか、不公平じゃないですか?」
「何がだ?」
「世の中、レディファーストですよ?」
「何だ?その”れでいふぁーすと”と言うのは?」
「女性を優先して優しくするって意味です!信長様だけ馬で、私が歩きで必死で後を着いて行くっておかしくないですか?」
そりゃあ、勝手に京の町の視察に着いて来たのは私だけど、馬とは思わなかったし、それに対して自力でついて来いはないでしょ!
「ふんっ、ここは俺の時代だ。貴様の時代の甘っちょろさを持ち込むな」
ばさっと羽織を翻すと、信長様は私を無視してまた馬を歩かせ始めた。
「もう、全然優しくない」
夢の中の空良には、いつだって溶けてしまいそうなほど優しいのに…
「あ、だから待ってくださいってば」
どんどん進んでいく信長様を追いかけようとした時、
「信長の情婦だな」
向こうから歩いて来た男に突然声を掛けられた。
「え?」
(今なんて言った?)
「すみません、今なんて…」
聞き慣れない言葉にもう一度気聞き返そうとした時、
「憎っくき信長に代わってお前が死ねっ!」
「はっ?」
状況を把握出来ず、もしかして斬られる?と思う間も無く男の手に持つ短剣が私を目がけて振り下ろされた。
「………っ!」
何もできずに立ち尽くす私は、それでも瞬時に目を閉じて訪れる恐怖に体を震わせた。
「……ぎゃあぁっ!」
覚悟した痛みは襲って無かったけれど、代わりに男がいきなり叫び声を上げた。
(えっ、何?何が起こったの?)
「來良っ!」
馬に乗って先に行ったはずの信長様がなぜか目の前にいて、その逞しい腕に身体を引き寄せられ閉じ込められた。
「っ、信長様?……っ!」
(私…抱きしめられてる?)
ドクンっと、心音が届きそうなほど大きく心臓が鼓動を刻んだ。
初めて会った時にもされたそれは、初日とは違うドキドキを私に伝えてくる。