第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
夢の中の事が事実ならば、二人は本当に愛し合っていて、お互いを何よりも大切に思い合っていた。
そんな人を突然失ってしまった信長様の心は、完全に行き場を失ってしまっているんだろう。
自分を責め、空良を死に追いやった関係者全てに制裁を下し、でもその怒りはまだ治らない。以前にも増して力で押さえ付ける信長様のやり方は既に破綻していて、本能寺の変はどの大名が起こしても不思議ではない状況なのだと、私はここに来てひしひしと感じていた。
史実では首謀者とされていた光秀さんにも会えた。
話はかなりはぐらかされてばかりであまり聞けなかったけど、
『本当に空良に似ているな。顔もそうだが柔軟に物事を考えられず強情そうな所がそっくりだ』
と、多分褒められてはいない言葉をもらった。
そして、
『御館様が穏やかに落ち着いておられた理由はお前にありそうだな。秀吉のお節介がうつったわけではないが、色々と話しかけてみてくれ。まぁ、逆鱗に触れて手討ちにされた時は線香の一つでもあげてやる』
手をヒラヒラさせて去って行く背中に、どこまでが本気で冗談なのかは分からなかったけれど、光秀さんもまた、空良が死んでしまった事に責任を感じているように思えた。
「………今日の夢は以上です」
「……そうか、もういい下がれ」
「はい」
信長様の食べ終えた膳を手に、私は部屋を出る。
(これでまた明日まで会えないな)
なまじ空良の記憶の夢を見続けているからなのか、信長様と自分との距離が一向に縮まらない事に、私の心はなぜかモヤモヤとしていた。
そしてそんな私のモヤモヤをさらに悪化される事件が起きる。
京の町を歩いていた私が、空良に間違われ襲われたのだ。