第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「あ、お注ぎしましょうか?」
私の反応に笑いながら、お銚子を手に取った信長様に声を掛けた。
「いや、いい。貴様は、酒は飲めるのか?」
やんわりと手で制され、代わりにお酒を勧められた。
「あ、いえ、まだ飲んだ事はありません。私のいた時代では、お酒は20歳までは飲めないので…なので遠慮しておきます」
「…そうか、随分と年をとらねば飲めぬのだな」
信長様はそう言いながら、二つの盃にお酒を注いだ。
「?」
(……えっ?飲まないって、今伝えたのに…?)
「ふっ、案ずるな、これは貴様にではない」
「え?………あ、」
(そうか、これは多分、空良の分だ…)
彼女が生きていた頃は、夜にはこうやって二人で晩酌でもしていたのだろうか?
クイっとお酒を一気に飲み干す姿はとても憂いを帯びていて…、
男の人を生まれて初めて綺麗で色っぽいと思った。
「…っ、あの、もう遅いので私はこれで失礼します。また明日から、色々と聞いてもいいですか?」
「構わん、勝手にしろ」
もう、空良との世界に入ってしまったんだろう。私の言葉に興味なく答えると、信長様は自身の盃にお酒を再び注ぎ月を見つめた。
本能寺の変まであと少し、
この日から、私の身には不思議な事が起こるようになった。