第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「おい、一つ訂正させろ、信長じゃない、信長様だ」
(あ、気になるとこそっちなんだ…)
「あ、はい、ごめんなさい。信長…様達の事を教えて下さい」
(そっか、いつも呼び捨てだったけど普通に考えればそうだよね。秀吉ってのもダメだったよね)
「お前、その顔だった事に感謝するんだな」
「え?」
「空良の名前を出して斬られなかったのは、俺ら一部の側近とお前だけだ」
「ええっ!?」
(早く教えて欲しかった…もう首を絞められ殺されそうになった後だとはとても言えない…)
「それ程に、信長様にとって空良と言う存在は大きい。いや、全てだと言ってもいい」
「でも、その空良は今どこに?」
(そんなにも愛されているのになぜ空良はここにいないの?)
私の質問に秀吉さんは一瞬目を見張ったけど、直ぐに悲しそうにその目を細めた。
「…この世にはもういない、空良は、信長様が愛した唯一の女性だ」
秀吉さんはとても辛そうに、二人の事を語り出した。
それによると、空良と信長様は、敵同士としてこの本能寺で出会った。様々な困難がありながらも二人は心を通わせ合い恋仲となり、いずれは夫婦にと約束していた。けれどそんな矢先に事件が起きた。空良をかねてより手に入れたいと思っていた将軍、足利義昭が空良を攫い命を奪ったのだ。
「…っ、酷い…」
「空良にはその時、腹に信長様のお子がいた」
「そんな…!」
「信長様は、愛する女性と子を同時に失われたんだ」
「……っ、」
あまりの悲劇に、秀吉さんの話の途中から涙が止まらなくなった。
私が知りたかった真実は、予想とは違い悲しすぎる結末で…
「あれ以来信長様は安土には戻られず、空良と初めて出会ったこの本能寺で過ごされている」
「そうなんだ…」
だから私を見た時、空良が戻って来たと思ったの?
けれど違っていたから…
帰らぬ恋人をずっとここで待ち続けてる。
なんて、なんて一途で悲しい恋……