第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「………………はぁ〜緊張したぁ〜」
とりあえず命が助かり、情報を得られることになった私は安堵のため息を長ーーーーく吐いた。
「織田信長って……、イメージと全然違う。あんなにカッコいいとか聞いてないし…」
冷たい眼差しが、空良の名前を聞く度に熱く切なく揺れた。
彼は、空良を心から愛していたのだと、聞かなくても十分な程に見てとれた。
無駄に着物越しになぞられた指の感触がまだ残ってる。
男の人にあんな風に触れられたのは初めてで、思い出すだけで顔を頭も熱くなった。
「……っ、まずは頭を整理しよう」
殺される心配はなくなったと言っても、佐助君とはぐれて異世界に一人なのには変わりない。佐助君は離れる事があるかもと言っていたから、その際の対処法と元の世界への返り方も聞いてたからここは大丈夫。
「えっと、あとは…」
ここに来てから起こった事と今後の事を整理していると、「信長様に言われて来た」と言って、新たな人物が登場した。
・・・・・・・・・
「驚いた。本当に空良に瓜二つだな」
「おっ、驚いたのは私です。まさか豊臣秀吉に会えるなんて!」
私がタイムスリップした今日は、佐助君の計算だと本能寺の変の一週間前。
って事は、この時秀吉は中国攻めではなくここにいたと言う事になる?あっ、でもそれだと信長がここにいるのも計算としては合わない?あれ?
「信長様の事を知りたいと言ったそうだが、お前は何者だ?」
史実との違いに戸惑っていると、豊臣秀吉は険しい顔で私に聞いてきた。
「あの…私は怪しい者では本当にないんです。私は歴史の研究をしていて、それで、信長と空良の事を偶然知り、その真実を知りたいと思ってここに来ました。こんな言い方良く無いって分かってますけど、このままだと今の信長はただの狂気じみた天下者として名が残ってしまいます。でも私はそれは違うと思っていて、後世に真実を伝え残す為にも、信長とその恋人空良の事が知りたいんです」
(この言い方なら、過去から来た事を言わなくても歴史編纂の仕事してる者として理解してくれるよね?)