第1章 あなたと両思い 〜徳川家康〜
「家康?どうしてここに?」
「城からあんたが俺の御殿に向かったって
連絡をもらったのに、あんたが全然来ないから。
何でもヘラヘラ引き受けるからこんな事になるんだ」
ホントはウソ。
御殿であんたを待ってる時間が我慢できなくて、
偶然を装って迎えに来たんだ。
でも、来てよかった。
「っ離してっ!」
女が家康を睨みつける。
「怒りをぶつける相手を間違えてない?
秀吉さんの事が本当に好きなら
その気持ちは秀吉さんにぶつけるべきだ。
今後この女に何かしたら俺が許さない。」
静かに、でも冷たく家康が言い放つ。
「ふんっ!誰にでもいい顔をして、まるで遊女ね。」
サラを睨みつけ吐き捨てるようにそう言うと、
女は逃げていった。
「遊女」思いがけず言われた言葉に落ち込んでると
「あんな女の言う事気にしない方がいいよ。
それより、行くよ」
家康が転がったサラの風呂敷包みを拾い上げ。砂埃を払うと、
もう一方の手でサラの手を力強く握り、引っ張るように歩き出した。
「......っ家康?」
力強く繋がれた手と、無言で歩く家康の背中を見つめながら、
サラは何も言う事ができずにいた。