ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
おかしいと思っていた。
こんな素敵な大人の男性が何故私を
構ってくれるのだろうかと。
いくら盗みの事を黙っているからといっても、
敢えて構う必要は無い。
むしろ記憶から抹消して欲しいから接触しない方が自然だ。
監視にしたって近づき過ぎている気がする。
だから私はエルヴィンさんは『実家関係』を
探りに来ているのだと当たりをつけた。
しかも実家を潰せるようなネタが無いか、を。
私は別にエルヴィンさんを責めたい訳でもない。
ただ、彼と純粋に会えなかった事が少し残念だっただけだ。
「貴族って愚かではありますがエルヴィンさんが
思うより奸智術数に長けているんですよ。
当然その世界で生きている私も例外ではありません」
なまじ権力なんてあるから質が悪いと思う。
こんな小娘でもエルヴィンさんの意図を
多少察する事が出来てしまうというのは
彼にとって誤算だったかもしれない。
「そう・・・か・・・。どうやら私は君の能力を
過小評価し過ぎていたようだ。だが、これだけは
訂正させて欲しい。あの本屋で出会ったのは
本当に偶然だった。君を偶然あの本屋近くで見かけ
・・・接触を図った。そして今のような関係を築いた。
そこは謝罪する。君を弄ぶような真似をして
申し訳なかった」
その言葉を聞いて私の心は軽くなった。
本屋で出会ったのが本当に偶然で良かったと
体の力が少し抜ける。
この期に及んでエルヴィンさんが嘘をつくとは
思っていない。
だから彼からきちんと真実を聞けて嬉しかった。