ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
「結婚が決まりまして・・・」
そう言うとエルヴィンさんは一度大きく目を開いた後
「・・・それは・・・おめでとう。・・・幸せに
なれると良いね」と躊躇いがちに口にする。
この言葉を聞いた瞬間、私は何故か恐ろしく
冷静になり貴族として冷徹な仮面を被れた。
「お相手は自分の親と同じくらいのお歳な上、
暴力を振るう格上の侯爵家の方で・・・本当に
幸せになれるのかなど火を見るより明らかですが」
「・・・っ・・・すまない。言葉を選び損ね
不快な思いをさせてしまった」
淡々と事実を言っただけだったが、
エルヴィンさんが慌てて謝罪してきたので
「エルヴィンさんが謝る必要なんてどこにも無いですよ」と
また事実だけを語る。
「貴族にはよくある政略結婚です。
そこに愛などというものは存在しません。
貴族は幼い時からそういう事も教育されます。
貴族として産まれたからにはこうなる事は
織り込み済みでした」
「・・・・・」
エルヴィンさんは何と言おうか考えているようで
押し黙っている。
なので、勝手に一人で喋る事にした。
「エルヴィンさんはもうご存知かと思いますが、
私のフルネームは・カプレーティです。
カプレーティ伯爵家の一人娘で調査兵団を
潰そうとしている家の者です」
「・・・っ!!」
エルヴィンさんはハッとした表情で私の顔を凝視した。
「本屋で出会った時は偶然かと思いましたが違いますよね?
私が調査兵団と敵対している貴族の娘だから
会っていたんですよね?そして都合良く私が
実家に反発していたから情報を得られやすいと
判断しましたか?」
エルヴィンさんの目を真っ直ぐ見つめていると、
彼は最初動揺の色を浮かべていたが、
すぐに冷静さを取り戻したようで、
真っ直ぐ私を見つめ返してきた。