ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
頭を下げていたエルヴィンさんは
「あともう一つ言わせて欲しい」と言葉を続けた。
「確かに最初は情報を得られないかという打算があった。
だが、途中から純粋に君と話したくてここに来ていた。
君と一緒にここで食事を取り、他愛の無い話をするのが
心地良くて・・・次が待ち遠しかったんだ」
目を伏せながら自嘲気味に笑ったエルヴィンさんに
いつもの力強さは無かった。
まるで少年が悪さがバレてしょげているような・・・
そんな幼さを感じ「あぁ、これは本当のエルヴィンさんだ」
と漠然と思った。
触れたかった少年のエルヴィンさんが見えて
嬉しかったものの、これから持ちかける話を
するには無理があった。
「ありがとうございます。リップサービスでも、
そう言われると嬉しいですよ」
「決してリップサービスでは無いのだが・・・いや、
今どのような弁明をしても言い訳にしか聞こえないな」
そんな可愛い顔をされてしまったら、
これから持ちかける話をし辛くなってしまうじゃないか。
私のような小娘がエルヴィンさんより上手とは思わない。
だから、彼が私の要求を飲んでくれるまで
強気で容赦ない態度を貫く。
「エルヴィンさん、私と取引しませんか?」
「・・・取引・・・?」
そう提案するとエルヴィンさんは驚いた表情で私を見た。