ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第2章 ハンサムな彼
口八丁でこの場を切り抜けようとする彼に
私は更に楽しくなってしまった。
だって、彼はあくまでここに泥棒に来たのであって
誰かと待ち合わせしている素振りなど微塵も無かったのだから・・・
黙った主を他所に、周りにいた使用人がハンサムの胸倉を掴み
揺さぶり始めた。
「おい、そんな言い訳通用するはずねぇだろっ!?」
「何がだろうか?私は事実を言っているだけだ」
物怖じしない彼に使用人達は青筋を立てながら
今にも殴りかかろうとしていたので、
私は勇気を振り絞って彼に駆け寄った。
私に感情というものがまだあると自覚させてくれた彼を
何とか助けたかったのだ。
「ダーリン、ごめんなさい!お屋敷が広くて
迷ってしまって・・・。待たせてしまったかしら?」
彼と使用人の間に滑り込むように割って入り
胸倉を掴んでいた腕を離すと、私は彼の首に腕を絡め
強引にキスをする。
彼はかなり背が高かったのでギリギリ唇に届いたが、
ヒールを履いていなかったら届かなかったかもしれない。
突然現れた私に周囲の人間が唖然としているのが空気で伝わり、
おかしくてコッソリ笑ってしまった。
至近距離で見た仮面越しの彼の目も驚きで見開かれていたので、
軽く足を蹴って状況を察しろと合図すると、
すぐに彼は調子を合わせてきた。