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ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】

第2章 ハンサムな彼






「すまない、ハニー。君を一人にしてしまって・・・。
やはり君を待っているべきだった」

「気にしないで。私が人の目が無い場所に行きたいと
我儘を言ってしまったんですもの・・・。ところで、
此方の方々は?」


そこで漸く今気づきました!と言わんばかりに
困惑げな表情を作って屋敷の主達を見つめると、
彼らは気まずそうな顔をしたが主がすぐに真意を
確かめるように言葉を発する。


「失礼だが、お嬢さん。この男は君の連れかね?」

「えぇ、そうですわ。最も今日初めてお会いして
一目惚れしたばかりですので、深くは存じませんが、
それがミステリアスで燃えますの」


馬鹿な火遊び好きの貴族女を演じると、
主は眉を寄せて何かを考えているようだったので、
追い打ちをかける。


「ひょっとして素性が気になりますの?
今日は仮面舞踏会という無礼講な場所ですのに?
このような会を開かれる方なら、ご理解頂けるものと
思っていましたが残念です」

「あ・・・いや、理解はしているとも。・・・ただ・・・」

「ただ・・・?」


チラチラと未だにハンサムな彼を怪しむ主に、
私は自分の持っていた懐中時計を見せる。


「素性が気になるのでしたら、私の素性は明かしましょう。
ですが、他言無用でお願い致しますね。お父様達に
バレてしまうと私の恋路が壊され兼ねませんので」


家紋が掘られた懐中時計を見た主は一瞬ハッとした表情をして
何か言いたそうにしていたが、笑顔のまま無言で
見つめていると何も言ってこなかった。

家名は嫌いだったが、初めて役に立ったなぁと
少し感慨にふける。

爵位が唯一の取り柄だが、主には効いたようで
「ゆっくり楽しんでいってくださいね」と言って、
あっさり解放された。

貴族というものが、ある意味単純で助かったと思っていると、
背後にいる彼から声を掛けられ、自分がした無謀な行為を
思い出し、逃げ出しそうになる。





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