ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第2章 ハンサムな彼
笑いを押し殺しながら彼を見守っていると、
廊下の奥から「貴様!そこで何をやっているっ!?」という
怒声が聞こえてきて、思わず身を竦める。
どうやら自分がいる反対方向から、この屋敷の者が現れたらしい。
よく見てみると、この屋敷の主なのか・・・身なりの良い
太った中年男性が使用人兼ボディガードの男達を引き連れて
きたようだった。
これはマズイな・・・
下手したら彼は殺されてしまうかもしれない・・・
かと言って、自分が何か出来る訳でも無いしなぁ、と
未練がましく様子を窺う。
「申し訳ございません。屋敷が広く少々迷ってしまいまして・・・」
ハンサムな彼が物怖じもせず、
堂々とそんな言い訳を述べたが、
屋敷の主達がそんな言葉信用するはずもなく、
ジリジリと間合いを詰めた。
「ほう?こんな屋敷の奥まで?途中で戻るという
選択肢もあったはずだが?」
訝しむ主に、彼は「それもそうなのですが、
実は人目のつかない場所で会いたい人物がいたもので・・・」
と答える。
夜会や今日のような仮面舞踏会では、
日頃の身分などは忘れて羽目を外す人間が少なからずいるので、
流石の主も沈黙する。