ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第10章 香水
いつもの屋台広場で、この前とは違う意味で
ぎこちなく食事をしながらエルヴィンさんに謝罪する。
「何だかヒートアップしてしまい、
申し訳ありませんでした」
「ふふっ、構わないよ。とても楽しかった。
君は私の魅力を最大限まで活かせる香水を選んでくれた
・・・という事だろう?」
「は、はい!そうです!」
エルヴィンさんとしては冗談として言ったのかもしれない。
私が当然とばかりに即答すると、彼は目を細めて
綺麗に微笑った。
「君は本当に私を褒めちぎってくれるね。
純粋な君にそう言われると素直に嬉しいよ」
「私は純粋なんかじゃありませんよ?」
「少なくとも私から見る君はとても純粋だよ。
・・・そしてとても一途だ」
エルヴィンさんの言葉に私の胸が痛む。
「・・・一途なんかじゃないです」
人は思い出をいくらでも美化出来る。
時を止め、その幸せだった記憶を思い出しては満足し、
美しい記憶の中で笑うラウリィを想い続けてきた。
でもまた『生きる』と歩み始めた私はそれが
本当のラウリィを穢す事だと気づき、
同時に記憶の中の彼から色が消えていってしまった。
永遠に触れられなくなったラウリィを見つめ続ける事が
不毛だと気付いた時、モノクロの世界に鮮明な色彩が
現れた。
それは偶然にもラウリィに連なるもので、
始めは興味も持てなかったのに今では
知りたくて知りたくて堪らない。
何故そんな欲求が生まれるのかと冷静に考えた時、
私は罪悪感を得た。