ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第10章 香水
「使い始めは柑橘系の香りが少し強く感じてしまうかも
しれませんが、割とすぐにミドルノートが効いて落ち着いた
上品なものになります。ラストノートで少し甘い優しいものに
なるので個人的にエルヴィンさんにはピッタリだと
思ったのですが・・・」
私のその言葉にエルヴィンさんはキョトンとした顔に
なったので、何か気に入らない事があったのかと焦る。
「す、すみません!全然安らげるものではなかったですよね!
選び直します!」
アワアワと幾つかの香水瓶を手に取っていると
「違うんだ」とエルヴィンさんから制止が入った。
「私は自分が冷たい人間だと知っているから
『少し甘い優しいもの』がピッタリだと言われて驚いて
しまっただけで君の選んでくれたこの香水自体の匂いは
気に入ったよ」
自嘲気味に笑ったエルヴィンさんに私は何故か一生懸命
「エルヴィンさんは優しいです!」と主張してしまった。
「お仕事柄、冷徹な態度を取らなければならないかもしれません。
ですが、団長としてではないエルヴィンさんは柔らかく
笑います。優しくない人間がこんな素敵に笑えるはずないんです!
私が選んだのは『調査兵団団長さん』の物ではなく
『エルヴィン・スミスさん個人』が似合うと思う香りです。
あの香水を選んだ理由をもっと正確に説明しますと、
エルヴィンさんには大人のダンディさがあるのでそこを
強調すべきかなって思いまして、多分あの匂いの男性と
すれ違ったらドキッとするというか・・・でも下品ではなく
落ち着いたウッディの香りが・・・」
そこまで言って私は気付いた。
これって思いっきり愛の告白のようではないか?と。
恐る恐るエルヴィンさんの顔を見ると、
彼も顔を赤くしていて目が合った瞬間逸らされてしまった。
私も顔を真赤にしてどう弁明するかアタフタしていると、
その様子を見ていたダリウスさんに「昼飯でも食ってこい」と
店から蹴り出された。