ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第10章 香水
さもしい自分を自覚し、その素晴らしい色を
手に入れようなどとは思わないようにした。
・・・まぁ、相手にもされないだろうけれど。
私は過去に終止符を打たねばならないのだと
自分を鼓舞しその準備を進めているが、
正直時々心が揺れてしまう。
もう一度復讐ではない人生を選ぶべきではないのか?と。
誰も知らない土地へ行き平民として暮らして、
平民として死ぬ選択肢だ。
もしかしたらそこで新たな出会いもあって、
普通に愛する者と一緒に暮らし幸せな人生を
歩むかもしれない。
少しそんな事も思ったが、その鮮明な色が私に
そうさせてはくれなかった。
その色は私に様々な感情を与えると同時に
ラウリィの無念を晴らせと思い起こさせる。
それに一度抱いた憧れは瞼の裏に焼き付いて
なかなか消えてくれなかった。
ラウリィが憧れたものを今私も
憧れてしまっているだなんて笑い話だ。
だから私は一途なんかじゃない。
――あぁ、嫌だ。
私も所詮ただの『女』なんだ・・・。
「エルヴィンさんこそ、私を買い被り過ぎてますよ」
エルヴィンさんが何故私と会ってくれるのか、
こんなに優しいのかは何となく察しがついている。
わかってはいるけれど、彼と会うのを止められない。
どうせ訪れる破滅なら、もう少しここで夢を
見ていたいと思うのは我儘だろうか・・・。