ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第7章 『ロミオとジュリエット』が嫌いな理由
「エルヴィンさんさえ良ければ、いくらでも愚痴って下さい。
今こうしている間だけは調査兵団団長としてではなく
個人に戻って欲しいです。流れ的に調査兵団の話に
なってしまいましたが、私は調査兵団団長としてではなく
エルヴィン・スミスさんという人とお会いしているつもり
なので・・・」
生意気な申し出だとは思ったが、そう言わずにはいられなかった。
何となくエルヴィンさんに『個』というものが無いような
気がしたのだ。
「無い」というのは語弊があるかもしれないが
『エルヴィン・スミス』という存在がよく見えない。
よく見えるのは『第十三代調査兵団団長エルヴィン・スミス』
という確固たる強い何かだ。
「不思議です。貴方という存在が本当に目の前に
いてくれているのかが、わかりにくくて・・・」
自然と口に出てしまった言葉にエルヴィンさんが目を大きく
見開いて固まってしまった。
完全な失言だったと焦りながら「ご、ごめんなさい!失礼な事を
言ってしまって!」と頭を下げる。
暫くの間沈黙が二人の間にあったが、
少ししてエルヴィンさんから「いや・・・」と静かな声が
聞こえた。