ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第7章 『ロミオとジュリエット』が嫌いな理由
「ごめんなさい・・・私は実際エルヴィンさんの仕事を
している所を見た事が無いので想像でしか言えません」
前置きを入れて彼の顔を真っ直ぐ見据えた。
「ですが、これだけは言えます。癖の強い調査兵団を統率
出来ているのは紛れもない事実です。それはエルヴィンさんが
兵士の方々から団長として認められているからだと思うんです。
情けない団長に兵士が着いていくはずがありません。
自分の命を預けているんですから。でもエルヴィンさんは
調査兵団団長としてこの場にいます。少なくとも私にとって
エルヴィンさんは十分有能な上司だと思えますよ」
人の上に立って、人の命を預かるという事はそれだけ多くの
何かに耐えなければならないのだろう。
それを表に出さず毅然と振る舞っている姿は壁外調査帰還時の
彼の姿からも窺える。
「私だったら情けない上司になんかに命預けられません。
その場から引き摺り下ろしてやります!」
最後は場を和ませるように冗談っぽく拳を握ってみせると、
彼は「ははっ」と吹き出し笑った。
「一般人で無ければ是非とも調査兵団に勧誘したいくらいの
頼もしさだ。・・・弱音を吐いて申し訳なかった」
折角笑顔を見せてくれたのに頭を下げてきたエルヴィンさんに
私は慌てる。
「いえ!部下の前では言えない事なんですから、今くらい
愚痴っても良いと思いますよ!?こう見えて私は口が
堅いんです!」
「あぁ知っているよ。君の口の堅さで私は助かったのだから」
また笑ってくれたエルヴィンさんに私も笑顔を向けた。