ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第7章 『ロミオとジュリエット』が嫌いな理由
生死の瀬戸際に立っている調査兵のエルヴィンさんに
そう言って貰えると、自然と心は軽くなった。
こういう風に心の機微に聡くて時には厳しく、
時には優しく欲しい言葉をくれるから彼は調査兵団団長として
皆を引っ張っていけるのだろう。
壁外調査中ではどうかわからないが、それでも変人と
名高い武闘派集団を束ねる器がエルヴィンさんには
備わっているのだと思う。
ラウリィがエルヴィンさんをベタ褒めしていた理由が
何となくわかった。
ふふ・・・と思わず笑ってしまったら怪訝な顔をされたので、
私は素直に思った事を伝える。
「ラウリィが生前エルヴィンさんの事を褒めちぎっていた事を
思い出して・・・彼の言う通りエルヴィンさんは凄い人
なんだなと思ったらラウリィの目は間違いなかったと
誇らしくなってしまいました。
きっとエルヴィンさんは理想的な上司なんだろうなって・・・」
そこまで言い終わるとエルヴィンさんの表情が曇り、
その口許に自嘲的な笑みが浮かんだ。
「君こそ私を買い被っていると思う。私は・・・恐らく
理想的な上司では無いだろう」
とても辛そうなその表情に私は何と言って良いかわからない。
私は実際エルヴィンさんの仕事振りを見た事がある訳では
ないから尚更だ。
安易に「そんな事無いですよ」なんて言えるはずもなかった。