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ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】

第7章 『ロミオとジュリエット』が嫌いな理由






「そうか、君は簡単に死ぬ事を選ばない人なんだな」


エルヴィンさんの思わぬ言葉にキョトンとしていると、
彼は真剣な顔で私に向き合った。


「下らない柵で潰されてしまう無念さを私は痛い程
実感している。長年抱き続けている信念や夢、希望を持って
いる者程、志半ばで倒れた時の絶望は計り知れないだろう。
自分の弱さや性質を熟知している方が絶望に立たされた時、
窮地を脱する事が出来ると私は考えている。君は自分自身を
客観的に分析出来るから、今こうしてここにいるのだなと
思えて・・・」


いつの間にか『ロミオとジュリエット』の話題から違う話に
切り替わってしまっていたが、最後の方はエルヴィンさんが
言う通り自分の思想などの話になってしまっていたので
驚くことしか出来ない。

この人はほんの少し零した言葉から私の心の中にあるものを
読んでしまったのだろうか・・・。

もしそうだとしたら、エルヴィンさんは凄い人だと思う。


「すまない、本の話をしていたはずが逸れて
しまった・・・」


エルヴィンさんが苦笑しながらそう言った事で、
私も漸く我に返り「先に話逸してしまったのは私の方ですから」
と慌てて訂正する。


「それにエルヴィンさんは私を買い被り過ぎていますよ。
私は簡単に死を選ばなかったんじゃなく選べなかっただけです。
そんな勇気ありませんでしたから・・・」

「・・・私は簡単に死を選ぶ勇気は必要ないと考えている。
死ぬ前にやるべき事があるのではと考えてしまうからね。
だから、君がそんな必要のない勇気を持っていなくて
本当に良かったと思っているよ」



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