ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第7章 『ロミオとジュリエット』が嫌いな理由
「結果論ですよね。ロミオとジュリエットは誰にも
迷惑を掛けずに幸せになりたかったのに、それを家同士と
いう下らない柵が壊し、二人を死に追いやった。民衆が
助かったとして二人は?二人には何の救いがあったのでしょうか?
こう言ってしまうと二人だけが助かれば良いと
聞こえてしまうかもしれませんが、人間は弱い生き物です。
弱い者はまず自分達が幸せにならないと他者に寛容に
なれません。そういう余裕が無いからです。
それにもしも私が物語と同じ死に方をしたら、
自分の死後がハッピーエンドな終わり方でも納得しなかったと
思います。・・・まぁ、私は性格が悪いのでただでは
死にませんが・・・」
開き直りとも取れる物言いだったが、それが本心だった。
悲恋モノ・・・特に『ロミオとジュリエット』はまるで
自分とラウリィの物語のように思えてしまって、
どうしても感情的になってしまうのだ。
ラウリィの生家もそれなりの格式だったが、
途中から我が家の派閥と敵対するようになり、
結果彼の家は権力闘争の敗北で取り潰されてしまった。
一歩間違えれば我が家の方が取り潰されていただろう。
家同士の派閥のせいで、途中からラウリィに会う事も
禁止されていたし、それでも尚逢瀬を重ねてきた私達は
リアル『ロミオとジュリエット』だったのかもしれない。
ロミオであるラウリィが死んだ今、残されたジュリエットである
私はどうすべきか・・・。
あの物語のように後追い自殺をする?
―――否!
私はラウリィを死に追いやった者を許さないし、
そいつらを地獄に叩き込むまでは絶対死ねないとさえ
思っている。
死を選ぶ事はいつでも出来るのだから、精一杯生きてからでも
遅くはないという考えを持っているので、私が
『ロミオとジュリエット』に共感出来ないのは、
こういう気性のせいかもしれないなと思わず苦笑する。