ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第6章 過去と現在の繋がり
そう口を開きかけた時、離れた場所から
「っ!」という声が聞こえてきたので
そちらへ視線をやると、ダリウスさんと同じ商会団体に
入っているパン屋の女将が恰幅の良い身体をユサユサ
揺らしながら、此方へ走ってきている所だった。
女将が息を切らしながらテーブルに辿り着くと
「ここでに会えて良かった」と手に持っていた紙を
差し出された。
「ダリウスさんのとこに行こうとしたんだけど、
店が忙しくてすぐに戻りたいんだ。悪いんだけど、
帰ったらこの発注ダリウスさんに頼んでもらって良い?」
「はい、わかりました。いつものですよね?明日には
いつ頃届くかわかると思いますので、明日お店に伺います」
紙を広げて発注するものを確認してそう答えると、
女将はニコッと笑って私の頭をクシャクシャ撫でた。
「ありがとう、頼んだよ。デートの邪魔してごめんなさいね~」
女将が彼の方に向いてニコニコしながら頭を下げているのを
見て、私は慌てて誤解を訂正する。
「違います!彼はそういうのではなく、一緒に食事をして
いただけで・・・っ!」
「あら?こんなハンサムなのに勿体無い。あんたも年頃
なんだから早く恋人作りなさいよ~」
そう言うと女将はまた身体を揺らしながら去って行った。
唖然としながら見送っていると
「君は随分、ご近所さんに可愛がられているようだね」と
楽しそうな声が飛んできて、漸く我に返る。
「すみません、変な誤解を聞かせてしまって・・・。
あのおば様は良い方なのですが、お節介とかが凄くて
お見合いとかを薦めるのが趣味というか・・・・」
「いや、謝らないでくれ。君が庶民として馴染んでいるのが
見られて楽しかったよ。・・・えーっと、?」
「あ、はい、です」
頓珍漢な返しをしてしまったが、彼は楽しそうに
「良い名前だ」と笑った。