ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第6章 過去と現在の繋がり
「やはり、ナイフやフォークを使って人目を気にしながら
食べるより、こうして食事する方が美味しいですね」
「同感だ。貴族の屋敷で御馳走になる事もあるが、
正直味をあまり感じない」
「あ、わかります!高級食材使っているはずなのに、
何故あんなに残念なのか・・・」
「確かに不思議な現象だな」
「夜会とかで出されている食事は大抵冷めていますが、
それも関係ありそうですよね」
「調査兵をしていると冷めた食事を取る事は日常茶飯事だが、
兵舎で食べる物はそこまで不味いとは感じないな」
「じゃあ、いけ好かない人間がいる前で食べるから
不味いんですよっ!」
「成程。確かに」
二人で他愛も無い話をしていると食が進み、
残りが紅茶のみとなった時、彼が遠慮がちに話を
切り出してきた。
「以前会った時、君は名乗らないと言っていたが、
今君の名前を尋ねても良いだろうか?」
意外な申し出と言うか、一緒に食事をしているのに、
その時までお互い名前すら知らないという事をうっかり
失念していた私はキョトンと彼を見つめてしまった。
あの時、名前を名乗らなかったのはこれ以上彼とは
何の接点も持たないだろうという考えからだったし、
今では少し彼に興味がある。
「はい、私の名前は・・・」