ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第5章 彼との遭遇
そこではたと気づく。
そうだ、彼は調査兵なのだ。
という事はいつ戦死してもおかしくない人生を送っている。
今日この本を買えなければ、もしかしたら
もう二度と読めないかもしれないのだ。
もしもこの本のシリーズが好きだったなら、
読めなかった事を悔いてしまうかもしれない。
いつでも読む機会のある自分より、この本は彼が
買うべきだと思え、私は意を決して彼に声を掛けた。
「あ、あの・・・この本、どうぞ。私はいつでも
買えますので・・・・」
恐る恐る本から手を離すと、彼は穏やかな笑みを浮かべて
それを固辞する。
「いや、君の方が早かったからこれは君に・・・。
私は今度買うから気にしなくて良いよ」
その言葉に私は眉を釣り上げて、彼に本を押し付けた。
「何言っているんですかっ!?調査兵なのに本当に今度
買う機会があるかわからないじゃないですかっ!
今買って後悔の無いように読んでください!」
グイグイ本を押し付けていると、彼は突然真面目な顔をして
「やはり、この間ローゼで見たのは君だったのか」と言われ、
ドキリとする。
本から手を離し、しどろもどろになっていると、
彼はまた穏やかな笑みを浮かべて提案してきた。