ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第3章 かつての私
「本当に不実を働いてしまい、申し訳ございませんでした」
今までの経緯を話し深々頭を下げると、
店主は大きく溜息を吐いた後、私の頭を優しく撫でた。
「突然音信不通になって身を案じていたが・・・
無事で良かった。それだけで充分だ」
その言葉を聞いて、私は声を上げて泣いてしまった。
血の繋がりもない人がこんなにも優しく接してくれるのに、
血の繋がりのある両親は何故あんな人間なのだろうか。
お金や服、何不自由無い暮らしを与えていれば、
子供を人形のように扱っても良いというのだろうか。
私は未だかつて、両親に抱き締められた事などない。
「ダリウスさんが、私のお父様だったなら良かったのに・・・」
店主であるダリウスさんに泣きながらそう漏らすと、
彼は困ったように「自分はそんなに出来た人間ではないよ」と
笑った。
私は知っていた・・・
ダリウスさんは昔奥様と娘さんを亡くしていて、
私にその娘さんの影を重ねている事に・・・。
偶然それを知っても私の中でダリウスさんの何かが
変わることもなく、傷の舐め合いだったとしても
この心地良い親子ごっこをしていたかったのだ。
本当に酷いのはそれを知った上で知らないふりをしたまま
ダリウスさんに頼ってしまっている自分のさもしさだった。
ダリウスさんは私が泣き終わるまで根気よく待っていてくれた。