ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第3章 かつての私
ラウリィが壁外調査に行った時は生きた心地がしなかった。
仕事をしていてもソワソワして、
ついウォール・マリアの方角を見て祈ってしまう。
どんなに想像で覚悟を決めても、幼すぎる私には辛い現実だった。
見兼ねた店主が遠征から帰ってくる日には休みをくれて
彼を迎えに行く事が出来た。
そんな日々を数年重ねていったある日、
彼からプロポーズされた。
「君が20歳になったら結婚しよう」と・・・。
その時私は19歳で、あと数ヶ月で20歳だった。
店主も我が事のように喜んでくれて、私は幸せの絶頂だった。
調査兵団は安月給だし、これからどれだけお金が掛かるかは
わからないので、式などは挙げず指輪だけ買おうと決めた。
もうこの頃には私の父親代わりのようになっていた店主が
教会を一時借りてやるから、そこで誓いの言葉でも
言い合いなと言ってくれて、ラウリィと二人で泣いた。
この世界のこんな温かい人間が存在した事に、
私は神に感謝した。
ラウリィと私と店主のみで挙げる結婚式が、
この上なく幸せなもののように思え、待ち遠しかった。
―――だが、そんな幸せな日は永遠に訪れなかった。