ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第14章 逃亡先にて
・・・あれから私はエルヴィンさんとは会っていない。
一応ダリウスさん経由で私が無事な事などを
知らせてもらったが、エルヴィンさんから手紙が
来ることも会いに来る事も無かったので、
それまでの関係だったのだろうと諦め、
此方からはもう接触していない。
当然の事だと思う。
調査兵団廃止派の急先鋒だった貴族を潰すという目的を
果たしたのだから、もうエルヴィンさんが私と接点を
持つ必要などどこにもないのだ。
お互いの利害が無くなれば、それまで。
寂しいと思ってしまう事もあるが、
自由になる為エルヴィンさんを利用した手前、
そんな事言える訳もない。
お互い接触はないがウォール・ローゼに来たせいか、
調査兵団の本部が近くにあるせいか、
時折エルヴィンさんや調査兵団の噂話は私の耳に届いた。
どうやら最近エルヴィンさんは少し元気がないらしい。
お客で来ていた調査兵がそんな話をしていた。
もしかして廃止派の一掃でかなり疲労が溜まって
しまったのだろうか?
この半年壁外調査も行われていないから、
疲れるとしたらその案件くらいだと思う・・・多分。
内政事情はよくわからないが、廃止派の裁判も
ついこの間決着がついたばかりという長丁場だったので、
大変だったのではないだろうか?
例え憲兵団が主だって裁判をしていたとしても
エルヴィンさんが持ち込んだ証拠無しには
出来なかっただろうし、完膚なきまでに
叩き潰したかっただろうから
きっと『相談役』みたいな感じで彼は介入していただろう。
・・・全部憶測だけれどエルヴィンさんの性格上、
『相談役』は絶対していると思う。
エルヴィンさんを思い出してクスリと笑っていると
「ここかぁ!品揃えが良いって評判の店はー!」と
お客さんがやってきたので顔を引き締める。