第1章 『はじめまして』
「こんな所で!人生に終わりを告げるのは勿体ないです!」
『そんなこと言ったって…』
だんだん涙で前が見えにくくなる。
お気に入りだったはずの服。その袖で何度も止まらない涙を拭った。
「でしたら、新たな場所で、そこで出会う者達と共に、生きてみませんか!」
何を言われても心に刺さらなかったはずなのに。
目の前のスーツを着た男性の言ったその一言に何故か胸が少し高鳴った。
『どうしてそれを…わたしに……っ』
涙はまた、溢れ出る。
「いかがですか。私がそちらへ貴方様をご案内します」
今までその場から動かなかったスーツの男性が、一歩づつ私の前まで近づいて手を伸ばす。
「申し遅れてすみません。私は時の政府と言いまして、ある御方のお願いで貴方様を迎えに来ました」
真っ直ぐ私を見る力強い瞳。
こちらへどうぞと差し出された手に私は何も言わず掴むと、少し力強くではあったが柵の中へと引き戻してくれた。