第2章 手のひらにダイヤモンド【4部 仗助】
「この前のおすそ分け、ありがとうね。父さんも母さんも喜んでた」
「ほんとスか〜!そりゃあ良かった。お袋が作り過ぎて余らせちまったんで、貰ってもらうとウチとしてもありがたいんスよ」
「ふふ、朋子さん、何をするにも思い切りがいいからね」
家からしばらく同じ方向へ、他愛もない話をしながら歩く。
「それじゃ、ここでね。いってらっしゃい、仗助くん」
「ハイ。千尋さんも、いってらっしゃい」
分かれ道で互いに手を振って、それぞれの学校へ向かう。
これが最近の、毎朝の光景だった。
…のだが。
「なッ!?ちょ、ちょっと千尋さん!どーしたんスか!?それ!!!」
翌日の朝、仗助くんは私を一目見るなり素っ頓狂な声を上げた。
彼が指差す先には、包帯でグルグル巻きの私の腕。
「あはは……昨日ね、道を曲がろうとしたら、走って飛び出てきた子どもにぶつかったの。お互い派手に転んじゃって……その子は無事だったんだけど、私は腕をついた所のアスファルトが運悪くひび割れて、尖ってて。ザックリよ」
「うわあァ…」
「幸い骨に異常は無かったんだけど、なんせ傷口が大きいから。ものすごい重症みたいよね、これじゃ」
心配しないで、と笑ってみせるが、仗助くんの表情は険しい。
「……千尋さん」
呼ばれてなあに、と返事をする前にはもう、私の手は彼の両手のひらに包まれていた。