第2章 手のひらにダイヤモンド【4部 仗助】
杜王町って本当にいいところ。
美しい街並みに、美味しいレストラン、便利なデパートもあれば、おしゃれなカフェだってある。
そうそう、評判の良いエステもこの近くだとか。
そして何よりいちばん素敵なのは、私の家のお隣さん。
仗助くんは、私の自慢の幼なじみだ。
「あ!千尋さん、オハヨーございます!」
「おはよう、仗助くん。今日も髪型キマってるね!」
挨拶ついでにきっちりとセットされた自慢のヘアースタイルを褒めてみると、彼はそースか?とはにかんでいる。
この春から仗助くんは高校生、私は大学生。
朝、家を出る時間が同じなのは嬉しい偶然だ。
東方家と綾瀬家は親の代から家族ぐるみの付き合いで、私達は幼い頃からずっと一緒に遊んだり、ご飯を食べたり、側にいるのが当たり前の時間を過ごしてきた。
だけど、年下の男の子である仗助くんと、女子の私。子どもの時には感じなかった差が、ここ数年で随分開いてしまったように思う。
仗助くんは、少し前から私をさん付けで呼び、敬語で話すようになった。
……それまでは、"千尋姉ちゃん"って呼ばれていたのに。
驚いた私は彼を問い詰めたけれど、「そろそろ紳士らしく年上の女性への態度を改めようと思った」だとか何とかってはぐらかされてばかり。
もしや、嫌われてしまったのかと落ち込んでいたら、「そんな事は絶対にない」と言うのだから訳がわからない。
私としても仗助くんが大切な存在であることに変わりはないから、渋々受け入れたものの。
何度聞いても明確な理由を教えてもらえないまま時間が経って、最近ではもうすっかり慣れてしまった。