第3章 青い春と漫画家【4部 仗助(露伴)】
「なんかよォ、ここ最近ずっとだな。さては…男でもできたかぁ〜?」
横からひょいと顔を出した億泰がニヤニヤ顔で言った。
「億泰よォ、ミョーな事言ってんじゃあねーぜ、オメー。あいつにそんな相手がいっかよ」
咄嗟に否定したものの、その言葉を聞いた途端に心がざわざわと騒がしくなる。
男?千尋に?いやいやまさか。
だが押し退けようとすればするほど、不安は急速に胸を駆け上がる。
早い話が、仗助は千尋に惚れているのだ。
友人として接するうち、彼女の楽しそうに話す声や朗らかな笑顔、そして時折見せる優しさに、いつの間にやら夢中になってしまった。
冗談じゃあねー、億泰や康一だって気付いてねえんだ、あいつがこんなにカワイイって分かっているのはこのオレだけで充分だ。
「ま、大方なんか用事があって早く帰ってんだろ。明日の昼休みにでも聞いてみようぜ」
「あ、そういえばぼく、昨日千尋さんが家とは逆の方向に歩いて行くのを見たよ。ほら、ちょうど露伴先生の家の方へさ」
話題を切り上げようとしたところにやって来た康一が捨て置けない一言を放り込んだ。
「露伴ン?するってーと何だ、千尋は露伴先生んトコへ連日通ってるっつーのかよーッ?」
「それはわからないけど……あっちの方に他に用事がありそうな所なんてあるかなあ〜」
そういえば彼女も"ピンクダークの少年"のファンだった…等と2人で考え込んでいるが、答えが出る筈もなく。傍目に見ている仗助のモヤモヤばかりが膨れ上がる。
結局のところ、まあそういう事もあるだろう、どのみち明日になれば本人に直接聞けるのだから──そんな風にして、とりあえずこの話題は持ち越しとなった。
……1人を除いて。